|
その日、学校に遅刻した。
目が覚めたら三限目がちょうど始まる時間だった。
軽いカバンを背負って学校に行くと、教室は電気がついておらず誰もいない。
体育館で卒業式の練習をしているらしい。連絡板に汚い字で書いてあった。
鍵の掛かった教室の前にカバンを放り投げて、体育館の方へ行く。
遠くから覗くと、みんな静かに椅子に座って先生の話を聞いていた。
どんな顔をして入ったらいいか迷って、結局教室に引き返した。カバンを取って帰ろうと思った。
その途中、曲がり角の先から誰かが歩いてくる足音がして咄嗟にすぐ横のトイレに隠れた。
何となく手を洗ってしばらくぼーっとしていたら、「■■さーん」と自分を呼ぶ声がする。
教室前のカバンが見つかったらしい。(けど練習に参加していないのがバレたらしい)
聞き耳を立てていると、何人かの先生が自分を探している気配がする。
ヤッベーめんどくさい事になったなぁと思っていたら、先生がトイレに入って来た。
個室に入って鍵を閉めていたわけだけど、ノックされて担任の声で「誰か入ってるの?」と聞かれた。
げげっどうしよう、と思いつつも微動だにせず返事も出来ずにいたら、何人かの先生も集まってきてドアの前でざわざわし始めた。
「おい、入ってんのか?大丈夫か?返事せんと覗くぞ」
と一番嫌いだった体育教師(男)のあいかわらず不機嫌そうな声がして、流石に黙っているわけには行かなくなる。
観念して鍵を外し、ドアを開けると、教師四人が
( ゚Д゚)( ゚Д゚)( ゚Д゚)( ゚Д゚)
って感じでこっちを見ていた。
( '∀`)「…えへ、すんません」
_, ._
( ゚ Д゚)「…あ?おまえ何やってんの?そんで何笑ってんの?ふざけんなよボケ、心配したやろうが。ヘラヘラしてんちゃうぞ」
( '∀`)「はい、あはは、ホントすいません。あのちょっとお腹いたk」
_, ._
( ゚ Д゚)「いいからさっさと練習入れ。アホか。分かった?分かったらさっさと行け」
( '∀`)「へい。サーセン」
というやり取りの後、「自分は何をやっているんだ」と三分ぐらい泣いて担任に心配され、しかし何食わぬ顔で練習に参加した。
自分でも理由がよく分からなかったけれど、学年やクラスという集団や守らなければならない規則や先生という人や、たとえ口で言われなくとも協調しなければならないその空気が、つまり学校が死ぬほど嫌いで、時々意味の分からない反抗で憂さを晴らそうとしていた。
入っていた部活のおかげで比較的リア充グループにいたけれど、その中でもどこか浮いていたし、今はもうあの頃の誰とも連絡を取っていない。
リア充はリア充を演技しているんじゃなくて、ありのままがリア充なのだ。
リア充に合わせようとリア充の演技をして疲れていた自分は、あの子らとは全然違う種類の人間だった。 |